フランス・シャンブルドメチエ(手技術商工会議所)で技術講習
2007年09月24日(月)
Chambre de Metiers et de l'Artisanat
フランスでは、国家資格を取得したエステティシャンが、技術者として登録するシャンブルドメチエ(手職人の商工会議所)という公的機関があります。
技術者は、自分の活動地域の商工会議所へ職人登録し、そして商工会議所が主催する講習会が半期ごとに開催されています。
この講習会は、フランス政府からの技術者に対する援助金により成り立っており、技術者は1割程度の負担で受講することができます。また、自分が所属する地域以外の商工会議所での受講については、いったん受講料を全額支払いますが、のちに所属の商工会議所に書類を提出すると還付されるシステムになっています。

TGV(新幹線)でレンヌに

ブルターニュ地方・レンヌの街
パリから北にTGV(新幹線)で2時間、ブルターニュ地方のレンヌにある商工会議所から技術講習の依頼があり、講習内容は、3Dリフトフェイシャル&バスト技術(Le lifting 3D)でした。
この技術は、2004年よりフランスで4年連続ヌーヴェルエステティックのコングレスのメインステージで技術発表し、海外で定期的に講習活動を行っています。そして、フランスI.N.P.Iに届出を提出して証明(これは日本にはないシステム=いつ誰がどのようなメソッド・内容で世の中に発表したものなのかを証明するもの)取得した技術です。
今回は商工会議所が定めた受講料で、3日間講習に対してひとり480ユーロ(約¥78,240)の設定ですが、ブルターニュ所属のエステティシャンは、55ユーロ(約¥8,965)で、受講できるそうです。エステティシャンに対する対策も国によって、ずいぶん違いがあるものです。フランス政府による、手職人に対する待遇を感じさせるシステムです。
手技術商工会議所の入り口

手職人をモチーフにしたデザイン
講習会場
インターネットで講習会の案内がなされ、今回は、案内と同時に受講申し込みが定員いっぱいとなったそうで、キャンセル待ちが出ているとか・・・それはうれしい驚きでした。でも、喜んでばかりもいられません。なんといってもエステの本場フランスです。期待されているということは、それに応えられる内容をしっかり伝えなければなりません。
参加者は16名で、全員ブルターニュ地方の方で、年齢は、30代後半から60代までのキャリア15年以上のベテラン技術者の方々でした。これは、充実した講習会になりそうです。
限られた3日間という時間のなかで精一杯お伝えしたいので、出国前からテキストや配布物の準備に追われていました。海外では、行った先で、コピーやパソコンの環境が完全だとは限らないし、準備不足が原因で、現地であわてたくないので、いつも日本でテキストは人数分セットした状態で用意していきます。会場に、いつも使っているパワーポイント用のプロジェクターはないとのことでしたので、久しぶりにOHPを使いました。

教材は、メソッドのテキストと細かな解説と写真・イラスト付きの技術マニュアル、手順を覚えるためのカンニング用パウチシート、カウンセリング用の表情筋シート、そして技術DVD(別途料金)を用意しました。
海外では、日本語で表記したディプロマを欲しがられます。さすがに、ショーやステージでの発表のときとは違って、衣装までは日本風のものでなくていいので、技術者用の白衣で行いましたが、それでも、毎回出張時には、軽く50kgくらいの荷物になります。
エステティシャンとしては好ましい状況ではないのですが、重い荷物を持っての移動のため手のひらが固くなりがちです。いつも講習直前には、手掌にゴマージュでのお手入れが必要です。それと欠かせないのは、指先用のネイルオイル。乾燥して硬化した手にハンドクリームでは、とてもとても間に合いません。必ず、講習中に全員の方の肌に触れることを心がけていますので、入念な手の手入れが重要です。
3日間の講習プログラムは、朝9時から6時までと時間は長く、1日目の午前中は、オリエンテーションと3Dリフティングのメソッドの説明とデモンストレーションを行います。顔のリフトアップが目的ですが、背中から行うマッサージで、背中15分・デコルテ→フェイス→ヘッド→腕15分のハンドテクニックです。
東洋と西洋のテクニックの融合と日本的和のリズムを意識して、ツボやチャクラ、気の流れや筋肉の接続やホメオスターシスや自律神経のバランスを整えることを考慮したテクニックですが、ただこれらの技術を混ぜただけでは、限られた時間の中で結果を出すのは難しく、身体反応を計算した全57行程の流れになっています。技術解説では、一つ一つ意味を説明していくので、30分のマッサージに対して、約2時間かけてデモンストレーションを行います。
午後は、背中のマッサージの相モデル実習です。インナーマッスルの筋の硬直を改善するようなテクニックなので、深く刺激するために指を立てて立体的に行い、体重をかけて、肘の動きを駆使するようなテクニックが多く、疲労の蓄積度合いの高い肩甲骨まわりや肩をしっかりマッサージします。
顔の表情筋は、前頭筋と側頭筋で上に吊り上げられ、頭頂部を通って後頭筋、僧帽筋、広背筋とだんだん背中の大きな筋肉とつながっています。慢性疲労により、背中の筋肉に乳酸がたまり背中全体が上に硬直するとその影響で、顔の筋肉が下垂してきます。
3Dリフトフェイシャルの開発の原点は、物理的に見た筋の接続という単純な発想からはじまりました。顔をアップしたければ、背中を下げればいいということです。効果の持続のためにも、この背中のマッサージは重要で、1日目は、時間をかけて背中の実習をしていきます。
2日目は、背中の復習とデコルテからフェイスにかけての全行程を続けて行い、半顔終わったところでいったん止めて、全員に効果のほどを見ていただきます。効果は一目瞭然なので、こちらが説明するまでもなく、受講生の皆さんそれぞれが、頬骨の高さが違うだの目の大きさが変わっただの目の下のくまの色が違うだの・・・と勝手に皆さんで盛り上がってくれるので、その後はとても空気がまとまって楽しく進行できます。技術講習は、ステージ発表と違って一方通行ではないので、毎回手応えがあって、この充実感は、技術者冥利に尽きます。
受講後、マニュアルのイラストを見ただけで技術が思い出せるように、講習中は、できるだけ音とリズムで記憶に残るように、声を出して講習していきます。海外では、通訳を挟むので、どうしても自分の言葉で直接伝えるわけにはいかないので、意味がわからなくても音でイメージできるような日本語独特の擬音語をよく使います。
例えば、「くるくるくる」「ぐりぐり」「しゃっしゃっ」とか、数も現地語と混ぜて「いち、にい、さん、アン・ドゥ・トワ」と、技術に没頭していなければかなりおかしな状況でしょうが、技術者の方は必死ですので、誰も笑うことなく真剣に一緒に「くるくるくる~」を連発してくれます。「くるくる」に次いで、音的に反応がいいのが、「ななめに~ななめに~」これも連呼率はかなりいい言葉です。
疑問を持ったことに対しては、とことん質問されます。変に遠慮せず、質問してもらえるので、こちらもなぜそうなのかを説明できる機会がいただけて、うれしい限りです。
2日目の終わりに翌日のバスト技術の理論とデモンストレーションを行います。
3日目の午前中に、バスト技術の相モデル実習を行い、午後は、受講生からの希望でフェイシャルの総復習をして、質疑応答を行い、ディプロマをお渡しして記念写真を撮って終了です。
いつもディプロマと一緒に、何か日本の記念になるような小さなプレゼントを用意しています。今回は、グリーンティ(緑茶)のお香にしました。おみやげはもちろん日本から持参するので、かさばらず、こわれにくく、軽いもので日本的なもの・・・というと毎回けっこう悩みの種です。

Le lifting 3D実習風景

記念写真
「日本人は、きめ細かくて、器用でていねい」と今まで一般論として聞いてはいましたが、技術講習を通じて本当にそのことを実感しています。「右手と左手を違う動きで」とか、「指先と手根の圧を違えてすべらせる」などの複合的なテクニックに対して、海外の方はうまく対応できない方の比率が高いように思います。
また、技術と技術の間合いとか心遣いの点も、文化の違いを感じます。よく、「秀美は、細かい」と講習中に言われることがありますが、日本の技術を習いたいとの意向を考慮すると譲歩できないところが多々あります。
最後の質疑応答で必ず出る質問に、料金設定があります。これは、それぞれの国や地域によっての相場があるのでこちらから提示するのは難しいことですが、目安として日本での価格やパリのサロンでの価格をお伝えしています。
3Dリフトフェイシャルは、マッサージ自体は、背中15分とフェイス15分ですが、クレンジングやフェイシャル機器・マスクと組み合わせてコース設定すると約90分のメニューとなります。フェイシャルとしては、スペシャルな位置づけとし、日本では¥12,000~¥18,000、パリの老舗デパートのボンマルシェにあるディオールサロンでは、忠実にこの3Dリフトマッサージを取り入れていて、レーザーを取り入れたフェイシャル機器との組み合わせで2時間150ユーロ(約¥24,450)、3回コースで400ユーロ(¥65,200)に価格が設定されています。
初めてのフランス訪問から20年、今回70回目の渡仏になりました。初めて訪れたフランスが、タラソテラピーのツアーできたここブルターニュの土地でした。今日本でよく使われている海水の入浴剤がここブルターニュのものだと皆さんにお話しすると、日本はまわりが海なのに・・・と不思議がっていましたが、ここの海はいいからね・・・と皆さん誇らしそうでした。
(¥163/ユーロ:2007年10月1日現在)